ムラサキ
薬食同源
ムラサキは、多年生の草本で、高さは約60cmになります。
花は白色。6月~7月頃咲きます。根は太く紫色です。
この根を紫根(シコン)といい、貴重な濃紫色の染料や生薬として、古くから大切にされてきました。
あかねさす紫野行き標野行き
野守は見ずや君が袖振る
(万葉集 額田王)
(訳) 茜色をおびる、紫草の野を行き、標野(一般の人の立ち入りが禁じられた御料地)を行きながら、野の番人は見るのではないでしょうか。あなたが私に袖をお振りになるのを。
この有名な歌からも紫草(ムラサキ)が、数百年も前から貴重な植物として大切にされてきたことがわかります。
今も各地で栽培されていますが、環境の変化に伴い、生育数が減少、絶滅危惧1Bに指定されている貴重な植物だそうです。
ムラサキは、食用としては、ほとんどなじみがありませんが、葉を天ぷらにすると肉質感がありおいしいそうです。
生薬の紫根は、味は甘・鹹。性は寒。帰経は心・肝経。
体内の毒や熱を取り除き、炎症を抑える効果があるといわれています。
紫根を用いた漢方薬をご紹介します。
紫雲膏(しうんこう)
江戸時代の医師、華岡青洲が考案した漢方薬の軟膏で、紫根と当帰をごま油、蜜蝋、豚脂で煮だして作ります。
私が子どもの頃は、店の裏の小さな工場で父が紫雲膏を作っていました。
紫雲膏の仕込みが始まると家中、ごま油の良い香りに包まれました。
紫雲膏は、肌の乾燥、荒れ、魚の目、火傷、しもやけ、痔による疼痛などによく用いられます。
私は、踵がガサガサになった時にこれを塗り込みます。数日でつるつるになります。
紫根牡蛎湯(しこんぼれいとう)
水戸西山公(徳川光圀)の蔵方(秘伝の薬方)として伝えられている処方です。
原典の黴厲新書(ばいれいしんしょ)には、「無名の頑瘡(がんそう)を治す」とあり、病名はわからないが、手足や顔、胸、背中などにできてなかなか治らない皮膚病、リンパ・乳腺の腫物、膿瘍などを指すと考えられています。
紫根を主薬に、忍冬、升麻、牡蛎、大黄、黄耆、甘草、芍薬、当帰、川芎、十種の生薬から構成された処方です。
現代では、エキス化され、治りにくい化膿性の痛みや腫れで、長引くものや疲労感、貧血などの症状もあるものを目標に使われています。
紫華栄(しかろん)
「自然治癒力を高める」という点に着眼して開発された自然薬です。
紫根、当帰、十薬、人参、黄耆、川芎、薏苡仁、甘草の八つの生薬から構成されています。
人参、黄耆、当帰、川芎、甘草は、扶正(ふせい)の働き(生命力や抵抗力を補う働き)が。紫根、十薬、薏苡仁は祛邪(きょじゃ)の働き(老廃物など不要な物を取り除く働き)があるといわれています。
足りない物を補い、いらない物を取り除くことで、疲れやすい、疲れが取れない、冷えて辛いというお悩みの改善が期待できます。
ご紹介した3つの薬、いずれも紫根と当帰の組み合わせがあります。
この組み合わせは、内服、外用ともに血行を良くし、炎症を鎮め皮膚機能を回復させるそうです。
ご興味のある方はお問い合わせください。
今も昔も有用で貴重なムラサキ。後世に伝えたい植物のひとつです。
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